お金の貸し借りの際に、借主が所有する自動車を担保に設定するケースは多いものです。その自動車を金銭貸借の担保にしつつ、自動車の使用は借主に継続させ、借主が支払いを滞らせたら自動車を換金して返済にあてるという契約パターンですね。
このような自動車を担保にする場合にはいくつかの方法がありますが、自動車抵当法に基づいた抵当権の設定と、民法による譲渡担保設定が有名です。
自動車抵当法による抵当権
自動車抵当とは、借主が所有する自動車に抵当権を設定し、自動車は借主に継続利用をさせる制度です。
不動産の抵当権と同じように、借主が返済を滞らせた場合には、担保の自動車を換金処分して貸金にあてることが可能です。
この自動車の抵当権設定には、抵当権設定契約書を作成する他に、陸運局にて抵当権の登録手続をしなくてはなりません。
具体的には抵当権設定契約書と登録申請書を3部づつ用意して陸運局に出向き、自動車登録ファイルに登録を受けます。
但し、軽自動車や小型特殊自動車・小型二輪車には抵当権の設定はできません。
自動車は価額評価の減少が早く、また抵当権登録や換金処分の手続に手間がかかるため、現実には自動車抵当による担保設定は稀であり、譲渡担保設定による対処が多いです。
自動車の譲渡担保設定契約
譲渡担保というのは、金銭貸借の契約とともに担保物(自動車)の所有権を貸主に移し、借主が期限までに返済を完了したときにその所有権を借主に返すという方法です。
つまり、担保物の所有権は貸主に移しつつも、その利用は借主が継続的に行うということが可能となります。
そういう面では抵当権と似ていますが、抵当権登録を要しないので手続が簡便となり好まれます。当事者間で譲渡担保設定契約書を交わすだけで契約は有効となるので、確かに便利ですね。
但し、抵当権のように陸運局に登録をしないので、借主が第三者に自動車を売ってしまうリスクを予防できません。
そのようなリスクを防止するためには、陸運局で自動車の名義変更を行い、自動車の所有者を貸主に移転すると良いでしょう。(使用者は借主にしておきます。)
ただ、自動車の所有者名義がディーラーや金融機関になっている場合は、所有者移転は困難です。事前に車検証等を確認して所有者の名義を確認しておく必要があります。
それから、自動車税については所有者に請求が来るため、その支払方法について借主と確認しておくことも必要です。
(貸主が自動車税を徴収されて、借主からの返済は滞るような契約になっては意味がありません。)
金銭貸借と譲渡担保設定の契約書作成については、当事務所への依頼をご検討ください。