友人や親戚の会社設立や起業のために、資金の融資を頼まれて、貯蓄したお金を貸す場合にはリスクも伴うものです。
また、会社の運転資金が不足しているので、つなぎ融資としてお金を貸して欲しいと社長から依頼される場合や、会社間の技術開発などで資金を融資する場合も同様です。
こうした融資をする場合には、やはり確実に返済をしてもらうために、手を尽くしておく必要があります。
金銭消費貸借契約書と債務承認弁済契約書
いくら親しい間柄であっても、それなりの金額の金銭貸借をする場合には、口約束だけでは危険です。万一、返済遅延が起きた場合にも、貸した事実証明ができないと対処に困ってしまいます。
そこで、融資をするのと同時期に金銭消費貸借契約書(借用書)を作成しておくべきです。先にお金を貸して、しばらく時間が経過しているようなケースでは、返済条件を確認する意味でも、債務承認弁済契約書を作成するとよいでしょう。
融資した金額が60万円以下であれば、少額訴訟制度の対象となるので、前述の金銭消費貸借契約書や債務承認弁済契約書は、貸主と借主の当事者間だけで作成する私製契約書で問題はありません。
60万円以下の債権は、簡易裁判所で少額訴訟の手続をすれば、原則として1日で判決が得られます。その際に、私製契約書の金銭消費貸借契約書があれば、証拠資料として採用されるのです。
但し、債権額が60万円を超えると少額訴訟制度は利用できず、地方裁判所で通常の訴訟を提起しなくてはなりません。
その場合は、訴訟に要する期間も長期となり、かなり手間もかかることになります。(弁護士に依頼すれば費用もかかります。)
もっとも強力な手続の公正証書
資金を融資する立場では、返済が滞ったときのリスクはできるだけ抱えたくはないものです。そこで、高額な金銭貸借には公正証書を作成することをお勧めします。
公正証書とは、全国主要都市にある公証役場を通して作成する契約書のことであり、金銭給付の契約に関しては裁判の確定判決と同様の効果を発揮する強力なものです。
公正証書を作成したにも関わらず、借主(債務者)が支払い遅延を起こす場合は、裁判を行うことなく債務者の財産に対して強制執行(差押)が可能となります。
つまり、支払い事故が起きれば、裁判の手間や時間をかけることなくダイレクトに差押ができるのです。
公正証書には、このような強制力があるので、債務者も公正証書の契約については優先的に返済をする動機付けにもなります。
ある程度の金額を融資する際には、公正証書の活用は絶対条件として提示するべきでしょう。
返済条件も重要です
金銭貸借の際に、返済期日や返済方法を決めずに契約書を作成する人もみかけます。
日本人の人の良さの一面とも言えるのですが、そのような曖昧な条件でお金を貸すのは危険です。
返済時期について予測できないケースもありますが、そのような場合でも仮定の返済期日を設けておくべきです。
その期日に返済ができない事情が生じた場合には、再度話し合いをして返済期日を延長すればすむことです。
また、一括返済が厳しい場合は、分割支払いで少額づつでも毎月の期限までに返済を継続する返済条件にすることで対応します。
返済までの期間が長い場合は、一括支払いでは返済が厳しくなることも多く、少額づつでも毎月返済をする契約とすることをお勧めします。
毎月に一定額を返済しつつ、最終期限に残額を一括支払いする形にするのが、債務者も借金の存在を意識することになるので、返済事故が起きにくくなるものです。
事業に対する融資はリスクが伴うものです。
そのリスクを低減するには、金銭消費貸借契約書や公正証書の作成が有効な対策となります。