知人にお金を貸すように頼まれる機会は何度かあるものですが、そのときに対応を間違えると貸したお金と友情を同時に失うことになってしまいます。
少額であれば「貸した」のではなく「あげた」と思うことで割り切れますが、自分にとって大きな金額の場合はそうはいきません。
後から後悔しないために、貸す前にやるべき事項をあげてみます。
やはり、いくら親しい人であったとしても、ある程度の聴き取りと契約書の用意は必要です。
(大して親しくもない人や、何年ぶりに連絡をしてきた友人からの借金の依頼は、特に慎重に対応するべきです)。
<お金を貸すときの注意事項>
(1)お金を借りる債務者が何のために借金をしようとしているのか?
(2)債務者は他にも借金をしていないか?(借金の総額はいくらか?)
(3)債務者は借りたお金を返すだけの収入予定があるのか?
(4)債務者は具体的な返済方法や返済時期を明示しているか?
(5)債務者は金銭貸借の契約書の作成に同意するか?
こうした事項を明らかにして、返済が見込めると判断できる場合にのみ貸すというのが基本です。1つでも不審なことがあれば、心を鬼にして断らなくてはいけません。
これらの注意事項について、もう少し詳しく解説します。
(1)お金を借りる債務者が何のために借金をしようとしているのか?
何のための借金なのかを知るのは、貸すかどうかを決める重要事項です。
事業資金や生活苦といった漠然とした理由だけしか教えてもらえないようでは貸すべきではありません。
借金の理由がギャンブルや浪費であった場合は、貸さないのが相手のためでもあります。
(ギャンブルや浪費を改善させるには依存症治療をする病院等を検索し、そこに通院することを勧めるくらいしか方法がありません。)
事業用途で一時的につなぎ資金が必要だとか、離婚等で損害賠償金を支払う必要がある場合など、常習的な借金ではないことが確認できれば、貸すという判断もありえます。
(2)債務者は他にも借金をしていないか?(借金の総額はいくらか?)
会話の中で他の人や消費者金融に借金があるかどうかも確認するべきです。
その金額が債務者の年収を超えている場合は、多重債務状態で返済が滞る可能性が高くなります。
あまり親しくもない人が借金の依頼をしてくるケースでは、こうした多重債務状態になっている可能性があり、貸すべきではありません。
多重債務者にお金を貸しても、破産の時期を先延ばしするだけで解決にはなりません。多重債務だと思われる場合には、自治体の多重債務相談窓口に行くよう勧めるべきでしょう。
他には借金が無いことが確認できれば、貸す場合の最低条件はクリアと考えてよいでしょう。
(3)債務者は借りたお金を返すだけの収入予定があるのか?
債務者が定職に就いているか、定期的な収入があるかどうかについては絶対に確認しなくてはなりません。
失業中であったり無収入の場合には問題外です。相手が生活苦を訴える場合は、自治体の福祉窓口に相談することを勧めるべきです。
貸すという判断をした場合には、相手方の勤務先名称と住所、給与振込みがされている銀行支店名を確認した方がよいです。
万が一、返済遅延が起きた場合には、その銀行支店の口座を差押えすることを検討することになります。
(4)債務者は具体的な返済方法や返済時期を明示しているか?
相手が借りることばかり強く懇願し、返済時期についてはあいまいなことしか言わない場合は貸すべきではありません。
一括返済の場合は返済期日、分割返済の場合は毎月の返済月額を明確にしなくてはいけません。
(5)債務者は金銭貸借の契約書の作成に同意するか?
最後に返済条件について金銭消費貸借契約書(借用書)の作成に同意するかどうかも確認が必要です。
口約束だけで貸した場合、後で問題が起きると裁判で証明することに苦労するので、お金を貸すのと同時に契約書の作成もしなくてはいけません。
契約書を作成し、相手方の印鑑登録証明書と運転免許証(またはマイナンバー)のコピーを確保しておけば、万が一の場合にも裁判を経て、給与支払い口座の差押えという対策が可能になります。
以上のような事項を慎重に検討し、貸すと判断した場合には契約書の作成をしっかりと行うようにして下さい。