お金の貸し借りに関わるトラブルは、法人でも個人でもとても多くの頻度で起きています。
「お金を貸したのに予定とおりに返済してくれない」
「一時的な回転資金が必要で貸して欲しいという話だったが何年経っても返済されない」
「すぐに返すと言っていたが全く音沙汰が無い」
実際にこのような問題が表面化する頃には借主の経済状況は苦境に追い込まれていることが多く、借主に保険金や不動産などの財産が無い場合には回収は絶望的となります。
つまり、問題が起きてから慌てても手遅れであり、お金を貸すという重大な判断をする場合には事前の調査と対策が不可欠になります。
しかし、お金を貸す前に相手の信用調査をしようとしても、企業同士の取引なら帝国データバンクのような調査会社から資料を取り寄せることができますが、個人の信用調査については個人情報保護法などの制限があって難しくなっています。
企業が個人への与信調査をする場合には日本信用情報機構(JICC)やシー・アイ・シー(CIC)といった機関に加盟していれば信用情報を確認することができますが、個人が第三者の個人の信用情報を開示請求しても拒絶されてしまいます。
そうすると「個人」対「個人」の金銭貸借では信用調査も融資判断も全て自己責任で行わないといけません。
このように客観的な参考資料が無い状態で貸付をするか断るかの判断をするには、借金の申込者の事情説明に合理性があるかどうかで見極めるしかありません。
具体的には以下のような事項について説明を求めることになります。
(1)お金を借りる債務者が何のために借金をしようとしているのか?
(2)債務者は他にも借金をしていないか?(借金の総額はいくらか?)
(3)債務者は借りたお金を返すだけの収入予定があるのか?
(4)債務者は具体的な返済方法や返済時期を明示しているか?
(5)債務者は金銭貸借の契約書の作成に同意するか?
これらの質問事項について、妥当と思える内容であり、常識で考えても無理の無い回答が返ってくるなら貸すことを考えてもよいでしょう。
債務者が「返済予定は立たないが、今が苦しいので助けるつもりで貸してほしい」と懇願するようなケースは9割以上の確率で貸し倒れになってしまうでしょう。後に残るのは恨みの感情だけです。
そのような相手に必要なのはお金を貸すことでは無く、債務整理や生活保護の申請など生活再建のための方法を勧めることではないかと思います。それが親友や親戚ということであれば、貸すのでは無く当面の生活資金を贈与して支援するという形になるでしょう。
上記の5項目について、1つでも曖昧な返答があるようなら、心を鬼にして貸付は断るべきです。それでも義理人情に流されて貸すという判断をするときには、貸したお金は返って来ないことも覚悟しておく必要があります。(返済されなくても自分の生活は継続できる範囲の金額に抑えなくてはいけません)。
個人でお金を貸して、それが返済されない場合には誰も保証をしてくれないのです。
相手の話を聞いて誠実に返済される見込みが高いと判断できる場合は、それを口約束に終わらせずに金銭消費貸借契約書を作成することが必要です。
これが作成されていないと、万が一に返済がされなかった場合に法的対応が困難になります。数十万円以上の金額の貸付をする場合には必ず契約書を用意するようにしましょう。